クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

「さっきから、君はずっと壁の花だね」
「え…」
「目立たないようにしたいのなら、かえって逆効果だよ。君のような女性は、独りでいる方が目立つ。こんなところじゃ、特にね」

私のことを、ずっと見ていたというのだろうか…？

返答に窮していると私に、彼は手を差し伸べた。

「行こう？」
「え…？」
「俺が今晩の君のパートナーじゃ、不釣り合いかな？」
「そ、そんな…！　…でも…」

あの女性たちはどうするのだろう。
彼女たちを差し置いて私を優先すると言うの？
出逢ったばかりの私を？

戸惑う私に、彼は微かに眉根を寄せて、独り言ちるように続けた。

「お願い、手を取って。じゃなきゃ、強引に連れて行ってしまうよ」

言うや否や、彼は私の手を掴んで引き寄せた。

突然の動作に驚くも、私は咄嗟にその手を握り返していた。
そして彼は私を引っ張って入口へと向かっていったのだった。