クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む～運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です～

そう思うだけに、抑えつけていた衝動が甦ってくる。

今も彼女の胸に巣食っているだろう苦しみや悩みを解消してあげたい。
救ってあげたい。支えてやりたい。

けれども、彼女にとって俺はただの一晩だけの男。
だらしない男だと、「汚らわしい男」だと思っているかもしれない。
彼女の胸の内に分け入る資格はない男だと決めつけられているのかもしれない。

確かに俺はしょうもない男だった。
でも確信する。

それも今夜で終わった。

俺はもう、彼女にすべてを捧げたい。

「真っ白な君に初めて色を付ける光栄に恵まれて良かった。お望みどおり汚れることはできたかな。…とは言っても、とても綺麗な艶のある色に染まって、汚れたというには程遠いけれど」

彼女ははっとしてうつむいた。

「…ごめんなさい。自棄になっていたとはいえ、変なことを言ってしまって。あなたに対してとても失礼なことを言ってしまった…」
「いいよ、気にしないで。でもそう思うなら、教えてほしい」
「…」
「どうして汚れたいなんて？」

彼女は少し黙った後、ぽつりと言った。

「自分を変えたかったから」

その目は途方もなく遠くを―――彼女が抱えている深い闇を見つめるように、心細げで寂しそうだった。

すでに完璧な彼女の、何を変える必要があるのか。
けれども彼女は、その先を続けることはなかった。
彼女と俺のその距離をどうしても埋めたくて、俺は彼女を抱き寄せる。

「望むとおり、俺は君を変えられたかな」

押し黙る彼女。