クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~



閉店後、今週いっぱいで私が退職すると事務室で公表された。

「そんな急だよ…!」
「あと数日でお別れなんて、寂しくなるよ、芽衣子さん…!」

みんな、口々に惜しんでくれた。
こんなに残念がってくれるなんて想像もしていなかった私がつい涙ぐんでしまうと、みんなももらい泣きしてくれる。

本当にここで働けて良かった。
お仕事の仲間だったけれど、まるで友達のように感じてしまう。
みんな、父が認めた子だけと友達付き合いをしていた私が初めて自分で作った、かけがえのない友達だった。

「ああ…いたいた! 芽衣子さん…!」

私の送別会を開こうと盛り上がっていたところに、突然慌てた様子で店長が事務室に駆け込んできた。
怪訝に思っていると、店長が手招きをする。

「どうしたんですか?」
「お、驚かないでよ、お、お、落ち着いて聞いてよ?」
「店長の方こそ落ち着いてください。何があったんですか? そんなに興奮して」
「き、来たのよ…! またあの専務が!」
「え?」

私は一瞬で硬直した。
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