クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~
「そうだね。君には大切な目標があるというのに短慮だった」
「いえ…ミスをして専務にご迷惑をおかけするわけにもいきませんし」
「俺のことは気にしなくてもいいんだよ。俺は一生懸命に頑張ろうとしている君を応援したいだけだから。それに…君に望まない結婚をさせずにすむ」

専務はどこか困ったような表情をにじませて、微笑を浮かべた。

「すまない。俺は少し、舞い上がってしまっているんだ」
「え…?」
「嬉しくて、仕方がなくて」

専務は私の手の平をとると、自分の左胸に当てさせた。
シャツごしに、専務の熱くて硬い肌の感触を感じて、私の胸がきゅんと跳ねる。

「ドキドキしているの、分かるかな」

専務は低く囁くように続けた。

「朝、君が俺のそばにいること。君の声を聞けること。君とこうして触れ合えること…全部が嬉しくて、恥ずかしい話、俺はこの三日間、子供みたいにはしゃいでしまっている」

ぎゅうと、鼓動を受け止める私の手を、専務が強く握った。
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