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「なんの話し?」


そんな声がして視線を向けると旭がトイレから戻ってきたところだった。


至近距離の旭に女子生徒たちは一斉に悲鳴を上げて頬を赤らめる。


しかしそれ以上旭に近づくことはなく、数歩後ずさりをして見つめている。


単なるファンといった様子だ。


そんな女子生徒たちを警戒している旭。


「旭大丈夫だよ、なにもされてないから」


「そっか。それならよかった」


旭は心底ホッとしたような表情を浮かべてようやく席に座った。


「有紗、今日一緒に帰ろうよ。放課後デート」


放課後デート。


その言葉に顔にボッと火が出るのを感じる。


放課後デート。


なんていい響きなんだろう。


そんなものが自分の身に降り掛かってくるなんて思ってもいなかった。


私はぼんやりとした気分になり、「うん」と、頷いたのだった。
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