追体験アプリ
旭と付き合い始めたことで私へのイジメはなくなっていくだろうから、このまま何も知られずにいたい。


「私、このイチゴドーナツにしようかな」


私はこれ以上クラスの話をしたくなくて、強引に話題を変えたのだった。


「彼女がイジメられてて、それでつい手が出たんだ」


2人で店先のベンチに座ってドーナツを食べたいたときだった。


不意に旭がそんなことを言った。


イチゴ味のドーナツにかぶりついていた私はすぐに口を離して「え?」と、目を丸くする。


一体何の話だろうと思ったら、旭がこっちの学校へ転校してきた理由だった。


「向こうの学校の女子たちは妬みがすごかったんだ。俺の彼女ってだけで蹴ったり殴ったり、最後にはお金も奪われた」


旭の話に突然胸が苦しくなって、食欲が消えていった。


それはまるで自分の体験を旭の口から語られているような感覚だった。


「女子たちって群れることが多いだろ? もちろんそうじゃない子もいるけど。だから、1人が嫌いだって言うとみんな便乗して嫌いだって言い始める。それがどんどん広がっていって、彼女自殺未遂をしたんだ」
< 112 / 170 >

この作品をシェア

pagetop