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それは甘いドーナツを食べるときにはあまりにも重たい話だった。


私にとっては特に、自分に降り掛かってきていたかもしれない未来で、これほど聞くのが辛いことはなかった。


「それが原因で転校したの?」


「あぁ。結局彼女にも振られたし、学校には居づらくなったしね。恋愛なんてこりごりだと思ってたんだけど、転校してすぐに有紗に一目惚れしちゃったんだ」


旭はそう言うと照れくさそうに笑った。


その表情は少年のように可愛かった。


「今度こそ守るって決めたんだ。だから、自分たちの関係も隠さないようにした。宣言することで周りの連中も納得せざるを得なくなると思って」


だから付き合い始めてすぐにみんなに知らせたのだ。


旭の行動の理由がわかって私はようやく胸のつっかえが取れた気がした。


「私を守るためだったんだね、ありがとう」


伝えると旭はまた少年のような笑顔を見せたのだった。
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