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☆☆☆

旭との関係は順調だった。


旭は毎日のように私を放課後デートに誘ってきたし、旭を通して新しい友人が何人かできた。


イジメは、もちろん旭と付き合い始めてからパタリと止まっている。


私をイジメるということは、旭を敵に回すことだと、学校中の生徒が知っている。


ようやくまともな学生生活を手にいれた私はなにかに怯えることなく教室へ入っていく。


教室へ入ると数人のクラスメートたちが「おはよう」と声をかけてくれるから、私はそれに返事をして自分の席へ向かう。


机にラクガキはされていない。


運動靴が切り刻まれることもない。


お弁当だって普通に食べることができる。


そしれなにより、隣の席には大好きな旭がいる。


まともな学校生活と言ったけれど、これはもうパーフェクトだった。


鼻歌まじりにカバンから教科書を取り出していると、多美子が登校してきた。


多美子はうつむき加減で誰にも視線を合わせないようにこそこそと自分の席に向かう。


いつもの元気がないように感じて私はさっそく席を立って多美子に近づいた。


「多美子おはよう」
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