追体験アプリ
首をかしげて中のページを開いた瞬間、呼吸が止まってしまった。


バーカ。


シネ。


ブス。


マジックで大きく書かれたその文字には見覚えがあった。


バカのひとつ覚えみたいに同じ悪口ばかりを書く3人組。


知らない間に教科書を持つ手が震えていた。


私をイジメられなくなったから、多美子がターゲットにされたんだ。


漢文の教科書はいくら開いてみてもどのページにも同じラクガキをされていた。


一体いつから?


私が旭にのぼせている間に多美子はずっとこんなことに耐えていたの?


「大丈夫だから返して」


多美子はそう言うと私から教科書を奪い返した。


「いつから?」


私は呆然と突っ立ったままでそう聞いていた。


「別に、関係ないでしょ」


「関係なくないでしょ? それ、私がイジメられなくなったからだよね!?」


いじめっ子は、いつまで経っても誰かをイジメていないと気が済まない子もいる。


それが、夕里子たち3人だ。


常に誰かを見下してバカにすることで、自分の立ち位置を確立させようとしているのだ。
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