追体験アプリ
☆☆☆

翌日、私は気合を入れて1年A組の教室へと足を踏み入れた。


いじめられっ子を助けたことで自分がイジメられるようになる事例はたくさんある。


だけど私には旭がついているからみんな手出しはできない。


多美子を助けることができるのは私だけなんだ。


教室の中を見回すと多美子はまだきていなくて、あの3人組がキャアキャアと黄色い声を上げながら会話をしている。


一応多美子の机を確認してみたけれど、ラクガミもされていないようで安心した。


注意深く3人を関しいながら自分の席につくと「真純に彼氏ができたんだって!」と、由希の声が聞こえてきた。


わざとらしく教室中に響くような声を上げている。


「モデルで活動してる他校の人なんだよね? 黒坂くんよりもずーっとカッコイイ!」


旭の名前が出てきて敏感に反応してしまった。


振り返ると真純の自信満々の笑顔と視線がぶつかった。


すぐに視線をそらして前を向いたけれど、真純に彼氏ができたというのは胸が悪くなるような話だった。


あれだけ人をイジメている人間が幸せになるなんて許されることじゃない。


イライラと抑えきれずに奥歯を噛み締めていると、スマホが震えた。


多美子からからもしれないと思って確認してみると、そこには《追体験完了しました》と表示されている。
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