追体験アプリ
☆☆☆

「ごめん」


昼休憩時間、私は旭を呼び出してそして別れを告げていた。


「どうして? 俺じゃダメだった?」


目の前にいる旭は青ざめた顔で私を見ている。


私は大きく左右に首を振った。


「旭はダメなんかじゃない! ただ、私が悪いの」


私が幸せになると、あの3人も幸せになってしまう。


それは絶対に許せないことだった。


多美子のためにも私が頑張らないといけない。


「そっか……」


旭はキュッと唇を引き結ぶとそれ以上なにも言わずに私を置いて行ってしまった。


私は泣いてしまいそうになるのをどうにか我慢してスマホを取り出した。


これで真純を不幸にすることができる。


だからいいんだ。


これで、いいんだ。


私は自分にそう言い聞かせながら追体験アプリを起動したのだった。
< 126 / 170 >

この作品をシェア

pagetop