追体験アプリ
耳を済ませてみれば、昨日の帰りがけに男に無理やりホテルに連れ込まれたという内容が聞こえてきた。


「それってやられたってことでしょう?」


「わかんない。でも今日休んでるしさぁ」


「黙れ!!」


真純が怒鳴り声を上げて立ち上がった。


椅子が後方に倒れて大きな音を立て、教室中が水を打ったように静かになる。


「由希はやられてなんてねぇよ!」


非情な噂を打ち消すように叫ぶ真純。


なぁんだ、やられてなかったのか。


少し残念な気がしたけれど、男に無理やりホテルに連れ込まれただけでも、十分恐い経験をさせることができたはずだ。


「罰が当たったんだね」


多美子が私へ向けてウインクする。


私は笑顔を返しておいた。
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