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「おいそこ、なにしてる」


先生が授業を止めて注意しても真純は止まらない。


その頬に汗が流れていき、顔はどんどん青ざめていく。


止められないのだ。


止めたくても、自分の意志では止められない。


真純は涙の滲んだ顔を上げた。


それでも右手だけは乱暴にカッターを振り回し続ける。


ぼろぼろになったプリントとノートが床に落下して、カッターナイフは机に突き立てられた。


「キャア!」


近くで見ていた夕里子が悲鳴を上げて飛び退いた。


「危ないじゃないかやめなさい!」


先生が近づいて行っても真純は止まらない。
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