追体験アプリ
幸いにも個室の外には誰もいないようで、様子を確認するような声はきこえてこなかった。


重たい沈黙が多美子の上におりてくるのがわかった。


だけど途中でやめるつもりはなかった。


たったこれだけの復讐なんてつまらない。


今度はさっきの真純よりももっともっと楽しいものが見てみたい。


その思いで私は服に隠れる部分をカッターナイフで切り裂いていく。


腹、胸、ウエスト、太もも、二の腕。


少し血が滲んでくる程度の傷なのに、あちこちに傷が入ると全身がビリビリと痺れるように傷んでくる。


体が熱を持ち、必死に傷口を治そうとしているのがわかる。


私は多美子にムリヤリカッターナイフを握らせて背中を切ってもらった。


その傷は一番浅くて、血もでなかった。


それからいつものようにアプリを使い、夕里子の名前を記入すると、私達はようやくトイレから出たのだった。
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