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これでようやく帰れると思ったときだった。


待合室に見知った顔を見つけて私は思わず立ち止まっていた。


普段なら絶対に立ち止まらないし、気が付かないフリをしたはずの、太一だ。


太一もこちらに気がついてすぐに駆け寄ってきた。


まさかこいつ、ここまでついてきたの?


そう思って警戒したが、太一の座っていた横には1人のおばあさんがいて、その人はどこか太一と雰囲気が似ていた。


「偶然だね」


少し頬を赤くして言う。


「本当にね」


私はもう太一に興味をなくし、ぶっきらぼうに返事をした。


「どうしてここに? もしかして怪我を見てもらったの?」


その言葉に私はとっさに人差し指を立てて口元に当てていた。


妙な傷が体にあると両親にバレるわけにはいかない。


「別になんでもないから」


早口にそう言って私は太一に背を向けた。


太一にここにいる理由を知られないほうがいいと、本能的に感じた。


私は逃げるようにして病院を出たのだった。
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