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今日の3時間目は体育の授業で、校外ランニングになっていた。


右手を包帯でグルグル巻にしている真純は当然休むものだと思っていたけれど、体操着に着替えてグラウンドへと出てきていた。


みんなが好機の目を向けている中、真純はひとりで準備体操を始める。


以前までは真純のまわりには沢山の友人たちがいた。


由希や夕里子だけじゃない。


真純と一緒にいればイジメられないと考える連中が、わんさかいたんだ。


それがいまや真純は一人ぼっちだ。


最近は真純の周りでいろんなことが起こっているから、普段真純にこびていたクラスメートたちですら近づかなくなってしまった。


準備運動を終えて、みんなで同時にスタートを切る。


ランニングだからスピードはそんなに早くない。


ダラダラと会話ができる範囲のスピードで決められたコースを走るのだ。


私はこのランニングコースが好きだった。


普段とは違う風景を見ながら授業を受けることができるから、いい気分転換になる。


「昨日は大丈夫だった?」


後ろから声をかけられて振り返ると、多美子が追いついてきたところだった。


一瞬昨日の交通事故のことをどうして知っているのかと思ったが、多美子が言っているのは切り傷の方だ。


「大丈夫だよ。お風呂に入るときに少しシミたけどね」


そう答えると多美子は安心したように頷いた。
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