追体験アプリ
「有紗」


後ろから声をかけられて振り向くと、そこには青白い顔をした太一が立っていた。


太一は睨みつけるような視線をこちらへ向けている。


「なに?」


「ちょっと話しがある」


「話し?」


「教室内じゃちょっと、廊下に出てくれないか」


そう言われて私は多美子を見た。


多美子は「行っておいで」と、頷いている。


行きたくなんてなかった。


太一と交わす会話なんてひとつもないし。


でも多美子がそう言ってくれるなら、行かないわけんはいかない。


私はわざと盛大なため息を吐き出して席を立ったのだった。
< 156 / 170 >

この作品をシェア

pagetop