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「あ~あ」


聞き慣れた声に目を開けるとあたりは相変わらず真っ白で、私の目の前に真純が立っていた。


真純は憐れむような表情で私を見下ろす。


「真純?」


声を出したはずなのに、それは音声として自分の耳に届いてこなかった。


どうやらあたしたちは心の中で会話をしているみたいだ。


嫌だ。


真純なんかとこんな風につながるなんて気持ち悪い。


気分が悪くなっていると、目の前の真純がクスクスと笑い始めた。


「なにがおかしいの」


今の状況がわからないから、仕方なく質問する。


「見て」


真純が下を指差してそう言うので、私は視線を下げた。


そこにはさっきまで踊っていた横断歩道があって、潰れた車と救急車に載せられていく私の体があった。
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