追体験アプリ
そんな中、ひときわ黒い星があった。


それはゆっくりゆっくり、まるでコマ送りのように流れていく。


普段は流れ星の願い事なんて思い出さないのに、その日はなぜだか思い出した。


流れ星に三回願いを込めればそれが叶うと。


「家族が暖かくなりますように。家族が暖かくなりますように。家族が暖かくなりますように」


不意に真純が部屋の窓からそう唱えている光景が浮かんできた。


もちろん私は見ていない。


だけどそれは目の前のテレビ画面に映し出される映像のように、脳裏に流れてきたのだ。


私は唖然として真純を見つめる。


「家族の、願い?」


「そう。それで、朝起きたら、スマホにあるアプリが入っていた」


「追体験アプリ……」


「私はそのアプリを使って、楽しかった思い出を再び蘇らせた。幼かった頃はね、家族旅行や休日に遊園地とか、色々行ってたんだよ。それらを記入して、家族関係を修復しようとしていた」


真純の言葉にまた映像が見えた。


真純と真純の両親が遊園地で遊んでいる様子だ。


真純はソフトクリームにかぶりついて、鼻の頭にクリームをつけている。


それを見て父親が笑い、母親がハンカチを取り出して吹いている。
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