追体験アプリ
☆☆☆

私は夕里子が掃除しているのを横目で見ながら、アプリからの通知を確認していた。


『追体験完了しました』


それは昨日送られていた通知と同じものだった。


通知と夕里子を交互に見つめる。


「これ、本物?」


つい声に出して呟いてしまい、慌てて口を手でおおってスマホを隠した。


こんなすごいアプリを持っているなんて周りに知られるわけにはいかない。


もしこれが偶然出ないとすれば、私はどんなことでもできることになるのだ。


その事実にどんどん心臓が早くなっていく。


希望と期待が胸に膨らんでいくのは久しぶりの経験だった。


「さっきの夕里子、ウケたなぁ」


3人がようやく教室を出ていったタイミングで太一が声をかけてきた。


私は大きなため息を吐き出す。


またお前か。


そう言ってやりたかったが、今の私は機嫌がいい。


「そうだね」


と、ついまともな返事をしてしまった。


太一は嬉しそうに頬を赤らめて更に会話を続けようとしたので、私はそっぽを向いて無視したのだった。
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