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「うん、そうみたい」


私は玄関に入り、昔履いていた運動靴を取り出した。


色はパープルであまり可愛くないやつを、バーゲンで購入したのだ。


ほとんど履いていないそれは新品同様で、試しに足を突っ込んでみると以外にもしっくりきた。


その場で足踏みをして、玄関前の姿見で確認すると以外と似合っていることがわかって気分がよくなった。


なんだ、これも可愛いのかもしれない。


私のせいでずっと下駄箱に入れられていた運動靴はようやく活躍ができると喜んでいるようにも見える。


「ねぇ、聞いているの?」


お母さんはまだなにか話を続けていたようで、私は「うん。気をつける」と気のない返事をして家に上がったのだった。
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