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☆☆☆

結局、3時間目の体育は夕里子たち3人との休むことにしたようだ。


運動靴がない夕里子と一緒に3人共教室で自習ということになった。


もちろん、勉強なんてしてないとわかっている。


だけどそんな3人を羨ましいとは思わなかった。


今日の体育の授業は私の大好きなテニスで、3人がいないことで思う存分体を動かすことができるからだ。


私はもともと体を動かすことが大好きなのに、あの3人がいるとどうしても前へ出ることができなかった。


少しでも活躍しようものならあとから何を言われるかわからないからだ。


「井村さんすごいじゃん!」


久しぶりに本気で体を動かしたあと、クラスメートの安倍多美子だった。


多美子は小柄で瓶底眼鏡をかけていて運動はあまり得意ではない。


だけど成績は優秀で学年トップと言われていた。


「え、ありがとう」


入学して最初の頃挨拶を交わしただけの多美子に突然声をかけられて、声が裏返ってしまった。


「井村さんって運動得意なんだね?」


「うん、一応は」


「普段そんなふうには見えないからビックリしちゃった。尊敬する」
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