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太一は本当に心配しているのだろう。


だけどその弱々しい言葉に私は苛立つばかりだ。


太一がここにいる限り、家は目の前なのに帰ることができないままだ。


イライラと足を鳴らし始めたとき、太一の後ろから買い物袋さげたお母さんが帰ってくるのが見えた。


最悪のタイミングだ。


せめて気が付かれないようにしようと思っても、隠れるような場所はどこにもない。


お母さんはすぐに私と太一に気がついて駆け寄ってきてしまった。


「あら有紗おかえり」


いつもの調子で声をかけてくるお母さん。


空気が読めないお母さん。


私はひとりで盛大なため息を吐きだした。


「こんにちは、はじめまして」


「は、はじめまして。クラスメートの植本です」


太一は丁寧に頭を下げて挨拶をしている。


「そんなのいいから」


私はそう言ってお母さんの手を取って家へとあるき出す。


「植本くんに送ってもらったんじゃないの? ちゃんとお礼を言いなさい」


「そんなんじゃないから大丈夫」


そう言っても隣のお母さんは頬を赤くして、意味深な表情を私へ向けている。


きっと、娘の私がどう説明したって太一のことを勘違いしたままなんだろう。


イライラする。


なにもかもに。
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