追体験アプリ
☆☆☆

最悪な気分で自室へ戻ったとき、カバンの中がドロドロになっていることを思い出した。


涙が出てきそうになって、土がついたままの教科書を突っ込んだからだ。


また盛大なため息を吐き出したから、もうどのくらい私の幸せが逃げていったのかもわからない。


汚れている教科書をひとつひとつ、ゴミ箱の上で土を落としていたときスマホが震えた。


どうせダイレクトメールだ。


それ以外のものが私に届くことなんてないんだから。


そう思って作業を続けていたが、視界に入ったスマホ画面にはクラスメートからのメッセージが送られていた。


私は手を止めてスマホを確認する。


それは多美子からのメッセージだった。


《多美子:こんにちは!》


《多美子:今まであまり話したことないのに》


《多美子:突然メッセージしてごめんね!》


《多美子:体育の授業のときから井村さんのこと気になっちゃって》


《多美子:よかったら仲良くしてくれない?》
< 58 / 170 >

この作品をシェア

pagetop