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☆☆☆

「大丈夫?」


あれから10分ほど散々笑ったあと、3人はようやく帰っていた。


その間に雨脚は強まり、今では大粒の雨が痛いほどだ。


「ねぇ、井村さん?」


同じクラスの植本太一が私に傘を差し出してきた。


太一の長い足が視界に入った瞬間、苛立ちが体を支配した。


「ひどいねあいつら。怪我はない?」


「うるさい!!」


太一の言葉にかぶせるようにして叫び、その勢いで立ち上がった。


足元で泥がハネて白い運動靴を汚したけれど気にならなかった。


「なんてことしてくれんの!?」


私は無駄に背の高い太一をにらみあげて言った。


太一は私の言っている言葉の意味が理解できないのか、たじろいであとずさりをした。


「どうして怒ってるの?」


「どうして? そんなこともわかんないの?」


本気で笑ってしまいそうになった。


イジメられている私と陰キャな太一が一緒にいることが、やつら3人にとってどういうことは全く理解していないのだ。


これが学年で1番のイケメンだったり、体自慢の男子生徒なら話は大きく変わってくる。


あの3人が大笑いすることだってなかった。


でも太一は違う。
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