追体験アプリ
☆☆☆

この学校の屋上は昼休憩時間に開放される。


木製のベンチには4人の女子生徒がお弁当箱を広げていて、バドミントンで遊んでいる子の姿もあった。


以外と人が多くて3人は一瞬たじろいだが、私はそのまま貯水槽の裏へと連れて行かれてしまった。


貯水槽の裏は日陰になっていて今の時期でも比較的過ごしやすそうだ。


しかしそこにはベンチがなくて、お弁当を食べている生徒はいなかった。


へぇ、こんなところも視覚になってるんだ。


感心していると突然夕里子に突き飛ばされた。


私はコンクリートの上に転がり、起き上がる暇もなく真純が馬乗りになってきた。


私の体の上で手鏡を取り出して自分の顔を確認しはじめる。


完全に椅子扱いみたいだ。


「三万円は?」


鏡から視線を外さずに真純が言うので、昨日の出来事をようやくおもだした。


そういえば三万円もってこいとか言われていたんだっけ。


すっかり忘れてしまっていた自分に驚いた。


「持ってない」


簡潔に答えると、由希が私の太ももを踏みつけてきた。


力を入れられて痛みが走る。


「調子に乗ってんじゃねーよ!!」


夕里子が他の生徒には聞こえないように私の耳元で怒鳴り、鼓膜が破れてしまうんじゃないかと不安になった。


夕里子の大声のせいで頭がクラクラしている。
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