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「金持ってこいって言ったら持ってくるんだよ!」


由希に手を踏みつけられた。


まるでムカデを踏み殺すときみたいに、ジリジリと足首をねじる。


「ないんだから仕方ないじゃん」


私は痛みに顔を歪めて絞り出すように言った。


一夜で三万なんて稼げるわけがない。


「だったら今日の放課後お客さんを紹介してあげるから、行ってきてよ」


真純が私を見下ろして言った。


お客さん?


けげんな表情を浮かべると、真純がスマホ画面を突きつけてきた。


そこには一夜限りの出会いを求める男女の書き込みが沢山あった。


いわゆる援助交際系のSNSだ。


一瞬にして血の気が引く。


こんなものに参加させられるなんて考えただけで背筋が寒くなる。


見知らぬおっさんの前で裸になるなんて死んだほうがマシだ。


「ほら、この人の書き込み見てみなよ。女子高生が相手なら5万もくれるって!」


夕里子が横からスマホを覗き込んで興奮した様子で言う。


「じゃあこの人とアポとってあげるから、写真撮らせてね」


真純はそう言うと私へスマホカメラを向けた。


合う前にお互いの顔写真を送り合うみたいだ。


私はとっさに顔をそらした。


「顔をこっちに向けて」


真純の命令に夕里子と由希が動く。
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