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☆☆☆

1時間ほどボールングを楽しんだ3人は真純の門限のこともあってすぐにお店を出た。


私は3杯目のコーヒーを飲み終えてまた後をつけた。


7月の夕方はまだ明るくて、夕里子たちのような若い人たちが歩き回っている。


しかし真純の門限まであと1時間ほどになているから、3人はどこかに立ち寄る素振りを見せなかった。


この分だと今日はもうなにも起こらないのかもしれない。


落胆しそうになったとき真純が突然脇によって立ち止まり、電話を始めた。


「もしもし? ――うん、今帰っているところ――わかった。すぐに戻る」


簡単に電話を済ませて「すぐに帰らなきゃ」と、2人に伝えた。


「もう帰るの?」


「まだ門限まで時間あるよ?」


2人に言われても真純は左右に首を振る。


そして「またね」と軽く手をふると2人に背を向けて小走りに帰っていってしまった。


残された2人は顔を見合わせて泣きそうな顔をしている。


「相変わらず厳しみたいだね」


「両親の言葉は絶対なんだって? 従わないと殴られるって言ってたよね」


あの真純が殴られる?


自分の聞き間違えじゃないかと思った。


だって、真純の悲しそうな顔なんて少しも想像できないから。


「どっこの家もそんなもんだって思うと諦めがつくけど、幸せなやつもいる。不公平だよね」


由希はペッと唾を地面に吐いて言う。
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