追体験アプリ
☆☆☆
ドロが染み込んだ靴を洗うのは小学生以来かもしれない。
浴室に持ち込んだ運動靴を古い歯ブラシを使って丁寧に磨いていく。
洗濯用洗剤を歯ブラシにつけて人間が歯を磨くように磨いていくのだ。
これは小学校の頃、お母さんが教えてくれた。
以来、靴は自分で洗っている。
「あら有紗、帰ってたの? 今日はすごい雨だったわね」
買い物から戻ってきたお母さんが買い物袋を揺らしながらキッチンへと入っていく。
冷蔵庫に買ってきた食材を入れる音がして、それから脱衣所のドアが開いた。
「ちょっと泥だらけじゃないの」
「おかえり、お母さん」
私は振り返らず熱心に運動靴を洗いながら返事をする。
「傘はどうしたの?」
「学校に忘れてきた」
「もう、小学生じゃないんだから」
お母さんは呆れた声を出し、私の頭にタイルを置いて手で乱暴に水気を拭い始めた。
それはまるでペットにするような感じで、私は首を振って抵抗した。
だけどお母さんは力を緩めない。
「靴なんて後でいいから、先にお風呂に入りなさい」
「……うん、そうする」
お母さんに頭を拭かれている自分は野良猫のようだと思って、私は素直に頷いたのだった。
ドロが染み込んだ靴を洗うのは小学生以来かもしれない。
浴室に持ち込んだ運動靴を古い歯ブラシを使って丁寧に磨いていく。
洗濯用洗剤を歯ブラシにつけて人間が歯を磨くように磨いていくのだ。
これは小学校の頃、お母さんが教えてくれた。
以来、靴は自分で洗っている。
「あら有紗、帰ってたの? 今日はすごい雨だったわね」
買い物から戻ってきたお母さんが買い物袋を揺らしながらキッチンへと入っていく。
冷蔵庫に買ってきた食材を入れる音がして、それから脱衣所のドアが開いた。
「ちょっと泥だらけじゃないの」
「おかえり、お母さん」
私は振り返らず熱心に運動靴を洗いながら返事をする。
「傘はどうしたの?」
「学校に忘れてきた」
「もう、小学生じゃないんだから」
お母さんは呆れた声を出し、私の頭にタイルを置いて手で乱暴に水気を拭い始めた。
それはまるでペットにするような感じで、私は首を振って抵抗した。
だけどお母さんは力を緩めない。
「靴なんて後でいいから、先にお風呂に入りなさい」
「……うん、そうする」
お母さんに頭を拭かれている自分は野良猫のようだと思って、私は素直に頷いたのだった。