時の中で貴方と
高校生とき。
私の家庭は決して幸せだとは言えなかった。
父親は私が幼い頃行方不明になってしまった。
母親は一人で私と兄を育てた。
兄は気性が荒く、気に入らないことがあると直ぐに人に手をあげた。

決して裕福だった訳では無いのに、母は私を塾に通わせてくれた。
学校の勉強は苦手で、家でも兄がいつも怒鳴っていて、集中出来なかったからだ。

そんな先の見えないトンネルのような中で、
彼に…

海斗に出会ったのだ。

海斗はいつでも私の話を聞いてくれた。
授業もとても分かりやすく、海斗に教わっていた教科だけは成績が伸びた。
テスト出良い点数を取れば海斗は花のような笑顔を私に向けてくれる。
その笑顔を見るために頑張っていた部分もあった。

その花のような笑顔を私だけに向けて欲しい。
恋心だと気がついたのは高校生2年生の冬だった。


私は海斗に告白した。もちろん付き合えないことは分かっていた。でも自分の中で区切りをつけたくて、スッキリさせたくて、一方的に私の想いを伝えた。
ただのワガママだったようにも思う。
でも、どこか心の片隅ではあわよくば付き合えたりしないかと思っていたのも事実である。

「実はさ、海斗のこと好きなんだよね。」

「やっぱり?」

「何?やっぱりって」

「なんか、朱音のことを見てたら俺に好意があるのかなって言う感じはあったから。」

なんだ、好きバレしてたのか。今まで必死に隠せてると思ってたのが恥ずかしい。

「年下だから付き合えないよね。」
私は早くこの気持ちに区切りをつたくて、きいた。

「ん~年下だからといって、恋愛対象に見れないって言う訳では無いよ?」

この言い方がずるいと思った。
付き合えないならはっきりと言って欲しかったのに、変に濁されて。

「そうなんだ笑」
私は笑って誤魔化すしか無かった。

「でもありがとうね。年下から告白されたのは初めてだったから、素直に嬉しいよ。」

泣いているのがバレないように精一杯の気持ちを込めて、
「うん´`*」

そういうしか無かった。
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