Letter - 大切な人 -
第二十章 卒業
卒業式。
大抵の学校では卒業式の約一か月前から『家庭学習期間』と称して三年生は休みに入る。
学校の休みであるその一か月の間も美利は智樹のところに行くことは無かった。
現実を見たくなかったから――
そう、ずっと現実逃避をしていたのだ。
そしてその間も智樹はずっと目を覚まさない。
竜、和巳、琢己の三人は時々智樹の顔を見に病院へ足を運んでいたようだ。
意識はないが脈拍、呼吸ともに正常だと聞いている。
しかしとうとう卒業。
そこに智樹の姿はない。
智樹のいない卒業式が始まる。
教室に『失礼します』と後輩たちが数人入ってきた。
その手には『祝卒業』と印刷された小さな布がついている造花を持っている。
そして一人ずつ三年生の左胸につけてゆく。
――智樹の分は無い。