Letter - 大切な人 -
高校生活は楽しいものだった。
大親友の四人――和巳、琢己、竜、そして智樹。
彼らと話をする機会がなかったなら今の美利は存在しないだろう。
誰かが欠けていても、今の美利は存在しなかっただろう。
美利は近くにいる竜を見る。
視線に気付いたのか彼はにっこりと笑いかけてくれた。
いつも元気で優しい奴。
琢己も別の教室で美利のことを気にかけてくれているはずだ。
ふと頭に何かが当たった気がして後ろを振り向いた。
和巳だった。
和巳が美利の頭を撫でてくれていた。
生徒の椅子はすでに体育館に運び込まれている。
立っていた美利は机越しに和巳の正面に立つ。
「元気が少ないんじゃないか?」
そう言う和巳に、
「そりゃあ、卒業式ですから」
と、少し笑う美利。