Letter - 大切な人 -
第二十一章 着信音
卒業式も昔のことに思えるような春の終わり。
日曜日の午前中だった。
高校を卒業して一人暮らしを始めていた美利は、十畳ほどのワンルームマンション内に竜と琢己を招いていた。
マグカップを置いたテーブルの近くに座る琢己。
その横で琢己に寄りかかる美利。
毎週と言うわけではないが大学に行かない日は家に誰かを招くことが多くなっている。
「コーヒー貰うぞ」
自分のマグカップを持ちあげながら美利の頭を撫でた竜は立ち上がりキッチンへと向かう。
「ピリリリリリリ…」
その時に携帯電話の着信音が鳴った。
「竜の携帯が鳴ってるよ」
美利は姿勢を正してテーブルの上に置かれた携帯電話を持ち上げた。
「和巳からだって」