Letter - 大切な人 -
第二十四章 辿る

 無言で一分ほど智樹の左手を握る。

 気恥ずかしい状況に耐えられなくなったのか智樹が口を開いた。

「お友達さん第一号って、どういう経緯?」

 前回見舞いに来た時に話をしたことがずっと気になっていたようだ。
 最初にぶつかったからだよと再び説明するも、その意図が知りたいと説明を求めてきた。

「特に意図はないんだ。高校に入って入学式が終わって、教室の窓から見える外の景色を見ていたらいつの間にか時間が経ってた。

 帰らないとと思って教室から出ようとしたら智樹とぶつかったんだよ。

 友達の一人でも作ろうかなと思っていたところだったから、お友達さん第一号に選んだ。

 最初にぶつかったから、お友達さん第一号なんだよ」

 智樹の目を見て淡々と話す美利の話を聞いて『俺もその日は学校で時間を潰していたってことなのかな』と質問してきたが、流石にその時の智樹の行動は知らない。

「あの時間はみんな帰宅するか、同じ中学から来たクラスメイトと話をするか、そんな時間の潰し方をしている人が多かったからね。
 智樹も誰かと話をしていたかもしれないね」

 そっかあ。と残念そうにつぶやく智樹。
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