Letter - 大切な人 -
しかし美利はそう誤解されるような言動をしているなどとは微塵も思っていない。
そう思われるような行動、しぐさにも思い当たることが全くなかった。
五人で喋っているだけ。五人で笑いあっているだけ。
美利の中ではそれ以上でもそれ以下でもなかった。
その噂の元が何なのかが全く分からない彼女にとっては、美利が四股をかけているという話が出てきた意味がそもそも理解できていなかった。
せめてその噂の発生源くらい知りたいものだと、鬱陶しく思っている。
「くー」
連日の噂好きな生徒からの質問攻めで名前を呼ばれることも鬱陶しい。
「くーってば聞けよ」
「なんだよ」
自然と声色も低くなってしまう。
ちらりと声の方向へ目線を動かす。
「何怒ってるんだよ」
机の前で腕を組みながら立っていたのは智樹だった。