Letter - 大切な人 -

 ふと頬に何かが当たる気配がして目を開けた。

 背後にいたはずの竜の顔が十センチほど先にある。

「ごめん、起こしちゃったな」

 竜は美利の髪の毛を撫でていた。

「別に…」

 美利はそう言って再び目を閉じる。

 美利に何かを察知する神経質さがあればよかったのかもしれない。

 美利は何も気にしなかった。

 気にしなければいけない状況だったはずだ。


 髪の毛を触っていた竜の手は首筋を通って唇まで来た。


 唇に何かが触れた感触で驚き目を開ける。



 すぐ目の前に竜の顔があった。



「ちょ…」

 美利に喋るスキを与えず竜の右手は彼女を抱きしめるように背中に回されていた。

 左腕は美利の頭を抱きしめ肩に埋める。

 起き上がろうとした足は竜の右足で押さえられた。
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