Letter - 大切な人 -

「おいバカ、やめろって」

 竜と琢己は雪玉をつくって雪合戦を始めている。

「少しだけ気温が上がってきたから雪玉も固まりやすくなったな」

 和巳は琢己に加担して二人で竜に雪玉をぶつけている。

「お前ら卑怯だぞ! おい智樹こっちに参戦しろ!」

 竜が智樹に声をかけるが、智樹は美利の隣にカバンを置いて彼女と同じようにその上に座る。

「俺はいいや、それより俺たち付き合ってるんだよ」

 『いやいや、会話の流れが強引すぎるだろう』
 そう思って苦笑いを浮かべる美利だったが、雪遊びに夢中な竜はあまり聞いていなかったようだ。

「そうかよ。いや、それより参戦しろよー!」

「いや、ちょっと待て竜。もう一度聞いた方がいいと思うぞ」

 和巳と琢己が手を止めて美利と智樹を見比べている。

「もう一度聞くって、智樹たちが付き合って……――」

 竜は両手に雪玉を持ったまま動かなくなった。

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