Letter - 大切な人 -
「俺たちは何も変わらないよ、そこには智樹がいる。琢己だってくーのことを見ている。
俺だってくーが愛しいよ」
和巳はゆっくりと美利を抱きしめて、頬に小さくキスをした。
立ち上がると『最後は俺の番かな』と琢己が声をかけた。
和巳と入れ替わるように琢己が美利の前へ座り込んだ。
両手で美利の髪の毛をくしゃくしゃと撫でまわす。
「俺たちはいつもここにいる。この裏庭の木の下に。
自然とここに集まってくる。誰かが誘うわけでもなくな。
明日も明後日も、その次もずっと、ここに集まるんだろうな。
誰も何も言わないのにな。それが俺たちだろう?
俺たちはいつもここにいる、悩む必要はあるか?」
「…無い、かな」
美利の返事を聞いてふっと琢己がほほ笑む。
しっかりと美利を抱きしめて、その頬に軽くキスをした。
「俺たち五人は変わらないよ」
智樹は美利の頭を抱き寄せた。
「和巳、琢己、そして竜。俺も高校で最初にできた友達がこいつらで良かったと思ってる」
「さて、俺たちも帰るかな。寒いし」
そう言って和巳と琢己は足早に裏庭を出て行った。
それを確認した後智樹は美利に向かい合い、少しだけ長いキスをした。
それから彼らは二年生になる。
新学期を迎えてすぐ、美利の机の中には破かれた手紙が入っていた。