Letter - 大切な人 -
「寒い!」
和巳がその風を受けて腕をさすっている。
「あぶねーな今のトラック」
そう言う竜に『ほんとだね』と返事をする美利。
「ちょっと歩道に近すぎでしょ。ねぇ智……」
―――そこに智樹の姿は無かった。
「智樹?」
和巳の声が聞こえる。
美利の身体は固まっている。
その場所、智樹のいた場所から視線を外すことが出来ない。
和巳が歩きだして美利を通り過ぎていく。
その足音は後ろへ、後ろへ。