追憶ソルシエール
「ありがとね、ここまで送ってくれて」
「家まで送らなくて平気?」
「大丈夫だよ、ここまでで十分」
ショッピングモールから直接家に向かったほうが近かったはずなのに、わざわざ駅まで送ってくれて感謝しかない。
「気をつけて帰るんだよ」
「うん、凌介くんも」
「俺は大丈夫だよ。また学校で」
「うん、またね」
凌介くんが帰る姿を見送ろうとすれば、先に行きな、と言われて渋々改札を通る。振り返って手を振れば、笑いながら振り返してくれた。
久しぶりのデートは楽しかった。平日はほぼ毎日顔を合わせて話すけど、こうやって学校外で遊ぶのはいつもとはまたちがったワクワク感がある。
今日が終われば土日で休み。明日はバイトがあるけれど、お昼過ぎからだから早起きする必要もない。
「あ、岩田だ」
タイミングよく来た電車に数分揺られている途中、ママから来た一通のLINE。
" 牛乳ないから買ってきてほしい "
" りょーかい "と返事をし、うさぎがグッドサインをしているスタンプを送信して自宅に帰る途中にあるコンビニに寄った。そして牛乳を手にしたところで、カフェオレを持った西野くんに隣から声をかけられたのだ。
「あ、久しぶり」
「久しぶりだっけ。3日前くらいに会わなかった?」
「……そうだったかも」
ぎこちない。朝、駅で会うときとはまた違う。私服姿の西野くんと顔を合わせるのは何年かぶりだ。