追憶ソルシエール

「じゃあわたし行くね」


西野くんの横を通り過ぎてレジに向かう。牛乳だけ買うのはなんとなく気が引けて、満腹にもかかわらずバニラアイスも買うことにした。きっとわたしが食べなくても誰か食べるだろう。



店員さんに商品を渡して財布を出す。レジ横には焼き芋が並んでいて、お腹は空いていないのに匂いにつられそうだ。コンビニには誘惑が多すぎる。




「これも一緒で」

「え、ちょっと」


レジに置かれたカフェオレ。店員さんは無言でそのままカフェオレもレジに通す。



「890円です」

「なにしてるの」

「ついでだからいーでしょ」



わたしがお金を出す前に先に支払いを済ませた西野くんに不審な目を向ける。はい、と渡された牛乳とアイスが入ったビニール袋。




「ありがとうございましたー」


店員さんの声を背に、先に外に出た西野くんを追いかけるようにコンビニを出る。



「わたしの分いくらだった?」

「それくらいいいから。ついでって言ったじゃん」

「…………ありがと」



日が沈んで暗くなった今、並んで歩くのは慣れていない。



カサカサとビニール袋が擦れる音がやけに耳に残る。あいにく、西野くんとは自宅までの道のりが途中まで一緒だ。
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