追憶ソルシエール

「じゃあ一緒に勉強する?」

「するする!」


那乃の二つ返事を受け、早速今日の放課後に勉強会をすることになった。






学生たちで賑わっている駅の近くのカフェ。どの学校もテスト期間なんだろう。ひとりで、または友達同士で教科書を開いて勉強している制服を着た人たちがたくさんいる。


授業が終わり、図書館行く?と那乃に言ったらそれはないでしょ、と首を横に振り案を一蹴された。



図書館は静かすぎてあの空間にいるだけで息が詰まるらしい。那乃曰く勉強するには多大な糖分が必要ということで図書館は却下され、駅の近くのカフェに行くことになったのだ。



広い店内にまだ席は空いていた。注文をしてからフラペチーノを受け取り、長机の端に那乃と対面で座った。

席に着くや否や「生き返るー!」と抹茶ラテを飲む那乃。後に続いてフラペチーノを飲めば、身体中に糖分が行き渡る。たしかに、これは那乃の言う通りだ。



「なんの教科からやる? やっぱ古典?」


リュックの中から教科書と単語集を探す。理系の私たちは見事に文系の科目が苦手だ。那乃の補習対象科目も古典。現代文はまだ理解できるにしても、古文に関してはしっかり勉強しないと危うい。


「んー、もうちょっとゆっくりしてからー」

そう一言放つと抹茶ラテをグイッと飲んだ。唇の上には淡い緑のひげが誕生している。
< 109 / 134 >

この作品をシェア

pagetop