追憶ソルシエール
「世莉もいいよね?」
「もちろん」
「あ、佐田とふたりがよかった?」
「え? 急に変なこと言わないで」
「目の前でイチャつかないでね」
「そんなことしないよ!」
余計なことを言いすぎだ、那乃は。片方の口角だけが不気味に上がっている。前に人を揶揄うのが趣味だと言っていたけど本当にこの状況を楽しんでいる。必死に否定するわたしを見て笑うなんて悪魔なやつだ。本人の前でそんなこと言わないでほしい。
「ははっ、俺とふたりがよかった?」
不敵な笑みを浮かべながら隣に腰かける。凌介くんも凌介くんだ。那乃に乗っからないでほしい。
「凌介くんまで那乃の味方なの?」
まったくだ。はあ、とため息をついて最後の砦である香坂くんを見つめる。3人から視線を集められた香坂くんは「あー、」とぎこちなく笑うと
「ふたりで勉強したかったらしてきなよ」
わたしと凌介くんの顔を交互に見て、くくっと笑う。
親切だから、わたしの味方だろうと勝手に思っていたのに、どうやら違うらしい。危険だ。那乃と同じ匂いがする。
「……那乃早く勉強しないと補習だよ」
新作のさつまいもフラペチーノをストローで吸い込む那乃を睨む。
「はいはーいっ」
ふふっ、とおかしく笑う那乃を横目に、わたしも糖分を摂取し勉強を再開した。