追憶ソルシエール
「それから〜」
「香坂伊織です」
「岩田世莉です」
「……佐藤、那乃」
谷川くんに促されたわたしたちは、ひとりひとり挨拶をする。自己紹介なんて高校の入学式以来まともにしておらず、どこを見て話せばいいか分からなかった。ただ、西野くんのほうだけは見れなかった。
「これでみんな友達だね! せっかくだから一緒に勉強しちゃう!?」
ハイテンションな彼のペースに呑み込まれそうだ。
友達の友達とはいえ、初対面の人と勉強なんてわたしは嫌だ。落ち着かない。一応全員と顔見知りとはいえ、わたしだってほぼほぼ初対面だ。
……なんてことを言えるはずもなく。
勉強に疲れ不機嫌気味の那乃も、凌介くんたちが来たときとは打って変わって乗り気ではない。そこにひとりだけ明らかにテンションが違う人が来て、知らない人が来て、西野くんまで来て。先程の声色を聞く限り、イライラしてそうだ。
「んー、でも邪魔になると思うしなにより日向うるさいし」
困り果てていた中、口を開いたのは由唯くんだった。さすがは救世主。この気まずい空気を何とかしてくれるに違いない。
「なんだよそれ! 凌介の高校俺たちよりは頭いいじゃん! 俺たち3人で勉強しても進まないじゃん! こういうときに人と人は助け合うんだよ。な、凌介!」
由依くんのひと言で折れるかと思いきや、マシンガンのように話し出す。反応を求められた凌介くんが「あー、そうだね」なんて適当に返せば谷川くんはたちまち笑顔になって。
「じゃ、決まり〜」
そう言って凌介くんの隣に座ったのだ。