追憶ソルシエール

「疲れた?」


聞こえた声に顔を上げれば、対角線上にいる頬杖をついている由唯くんと目が合う。



「うん、さすがにずっと勉強集中するのはむり……」

「そりゃそうだよねー」


いつのまにかみんな席を立ってしまった今、この場にはわたしと由唯くんだけ。この前悩み相談みたいなことをした手前、勝手に少し気まずさを感じる。



次はなんの教科をやろうか。範囲広い世界史でもやろうかな。たしかテスト1日目だった気がする。まだ手つけてないから暗記しないと。




「ごめんね」

「……え?」


僅かに聞こえた声に、もう一度顔を上げればまた視線は交わる。




「わたしに言った?」

「うん、世莉ちゃんに言った」


聞き間違いかと思ったけど、そうではないみたい。

たしかにそれはわたしに向けた言葉だった。
由唯くんから謝られるようなことされたっけ、なんて考えてみるも全く思い浮かばず。



「どう──」


「ただいまー」

「見て! カスタムしまくってきた!」




"どういう意味?"

最後まで言い終える前に、戻って来た谷川くんたちの声に遮られた。




「じゃじゃーん! 谷川日向特製、スペシャルチョコレートフラペチーノ!! どうどう? めっちゃ美味そうじゃね!?」

「わー、いいと思うー」

「もっといい感想言って!」

「甘そー」

「これだから由唯は顔だけって言われるんだよ」

「顔だけとも言われない日向よりはマシだと思うけどね」



鋭いツッコミに口を紡ぐ谷川くん。若干目がうるうるとしているのは気のせいではないだろうか。



「そんなこと言わなくたっていいだろ!」

「先に喧嘩売ってきたのはそっち」
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