追憶ソルシエール
「んー……、誰にでも優しいところ、とかかな」
「うんうん、凌介優しすぎるよな! なんか仏? 神様?って感じだよね!」
「それは日向が甘えすぎなだけじゃね」
「ち、違うとも言えないけど! とにかく凌介は優しすぎるのが長所でもあり短所でもあるわけ!」
横から小言を挟む由唯くんに谷川くんが睨む。どうやら原因は谷川くんにだけあるとは限らなさそうだ。
「ごめん、遅くなった」
「那乃〜〜」
この場に長いこと放置しないでよ、と意味を込めて懇願する。どうかした?と口パクで伝えられるも、「谷川くんの勢いがすごくて困ってる。この空気に耐えられない」なんてことをこの場で言えるわけもなく、ただ首を軽く横に振る。
「ちょっと電話してて。なんの話してた?」
「凌介と天使ちゃんの恋愛事情! どこまで聞いたっけ!? 次なに聞こうかな〜」
「え? 世莉たちの?」
「そうそう!」
ズズズ、とストローをくわえて糖分を吸引する谷川くんは宙を見上げて次の質問を考えているようだ。
いいの? 大丈夫?
目で疑問を投げかける那乃に、苦笑いで返すしかない。
本当はやめてほしい。この話は終わりにしてほしい。
那乃の後ろを遮る、席に戻ってきた西野くんの姿を目で追う。まだ西野くんがいなかったからよかったけど、西野くんが戻ってきた今、この話を続けるのは気まずすぎる。まずもって、この状況がわたしにとっては異常なのだ。