追憶ソルシエール

「んー、じゃあ、天使ちゃんは今まで何人と付き合ったこ」

「世莉をそんな質問攻めにし」

「そろそろ勉強しろよ」



ずっと黙ってこの状況を変えることをできないわたし。那乃が救いの手を差し伸ばしてくれたと思えば、被せるようにまた新たな声が聞こえる。



「一番勉強すべきなの日向だろ」

「えー、そんなこと言わずにさーもうちょっと話さない? 紗奈も天使ちゃんの恋バナ聞きたくない??」



⸝その距離人ふたり分。
凌介くんと谷川くん越しに目が合った。



今日、初めてだ。最初合流したときも、みんなで少し話してるときも、勉強中も、まったくなかったのに。









「べつに。それより日向がクリスマスに補習引っかからないかのほうが気になる」

「え、は、えぇ!? 補習クリスマスにまでやんの!?」

「は、知らなかったの」

「知らねーよ! 早く教えてくれよ!」

「まあいいんじゃね。彼女いないし」

「うるせー! いてもいなくてもクリスマスに学校は行きたくないだろ!!」



長らく閉じていたであろう教科書とノートをすごい勢いで開き、シャーペン片手に集中モードになった谷川くん。


いくら勉強が嫌でも、クリスマスにまで学校に閉じ込められると聞けばやる気が漲るものなんだ。




「日向補習になると思う?」

「俺は補習になるに一票」

「おーさすが。おれも紗奈に同感」

「ちょいちょい、俺で賭けすんなよ!!」

「凌介は? 裏切らないよな?」

「俺もこのままだと補習になるんじゃないかと思う」

「なんだよそれ! 俺の命の恩人、伊織くんはどうよ!?」
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