追憶ソルシエール
────まもなく、2番線に電車が参ります。黄色い線までお下がりください。
ホーム内に、駅員さんのアナウンスが流れる。
「てか、俺からしたら岩田も変わってないと思うけどね」
先程の台詞に若干の不満を抱いていれば、そんな声が聞こえる。「例えば?」と首を傾げると、「んー、」と唸る。
「なんだろ。口調とか仕草? うまく言えないんだけど、懐かしーって思う」
「そう?」
自分のことは自分が一番わかっているはずなのに、そう言われてもわたしにはよくわからなかった。
「だから安心した」
「安心?」
復唱すると、そ、と短く呟く。
「中学のときと変わってないから」
「それっていい意味?」
疑って、見上げた。
西野くんのことだ。何を言われるかわからない。
どうせ、嫌味なことを言うんだろう。
「もちろん」
でも、横目で見下ろして口角を上げた西野くんは、見事にわたしの予想を裏切った。また悪態をつかれるかと思ってたから、少し拍子抜けしてしまう。
自分のことはわからないけど、西野くんのことはもっとわからない。