追憶ソルシエール
「……決めてないんですか?」

「うん」


まさかと思い問いかけたけれど、即答され呆気に取られてしまう。返す言葉も見つからない。

どこか行こうと誘っておいて、特に行くあては決まっていないらしい。由唯くんはけっこう無計画な人らしい。



「世莉ちゃんはどっか行きたいとこある?」

「特には……」


苦笑いで返すわたしに、「だよねー」なんてのんきな返事が届く。


どうやら、ほんとうに決まっていないみたいだ。
それからすぐ、ふいに由唯くんが足を止め、わたしも立ち止まる。


「あ、ここはどー?」

由唯くんの目線の先。それほど広くはないけれど、ブランコや滑り台などのカラフルな遊具がある公園。何人かの子どもたちが駆け回っている。


「うん」と頷いて由唯くんに続いて公園内に入り、空いていたベンチに座った。



「公園来たの久しぶりかも」

「まーこれくらいの年齢になると滅多に来ることないよなー」

ひとりごとのように呟いた言葉を由唯くんが拾う。


「そーいえば世莉ちゃんって紗奈と同い年?」

「そうです。由唯くんもですか?」

「そーそー高2。だから世莉ちゃん敬語じゃなくていーよ。そのほうがおれも楽」


「……わ、わかった」


さっそく実践してみれば、そのぎこちなさに由唯くんは笑った。わたしまで笑えてきてしまう。
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