屑 作 成 レ シ ピ



深夜零時。
上から見上げるその部屋、明かりは灯らないまま。


あの部屋に明かりが灯っていること、いつから減ったのだろう。
わたしが訪ねるたびに喜んで扉を開いたあの男は、いつから出迎えてくれなくなったんだろう。



ぎしぎしと鳴る階段をひとつずつのぼる。
シャワーを浴びてきても、すっかり外の生ぬるさにやられて汗が滲む。


ああ、そう言えばあの小さな浴槽にはいつから入ってないんだっけ。
そんなのももう、忘れていくような気がした。


気づけばもう夏が来ていた。
わたしたちが幸せだった冬は、もう反対側まで行ってしまったのか。


きっとこれから訪れる夏を、
わたしはきっと、好きになれない。




合鍵をもらったのは付き合ってすぐだった。

キーケースにふたつぶら下げてたら意味がないと笑っていたそれをそのまま差し出されたあの冬の日を思い出した。



『ミクにあげるつもりで待機してた』



なんだよそれ、
可笑しいと笑いながら、涙が滲んでたあの日。

寒さで真っ赤になった指先を温めてくれた、アイツのポケット。



自分で鍵を解いて、自分で扉を開く。
真っ暗な部屋、狭すぎる玄関、靴はない。



「―――お邪魔します、」


言葉は、もちろん、
返ってこなかった。



なんでセイはわたしだったの?
なんでだったんだろうね、たまたまあの日ふたりで飲んだお酒がまずくて意気投合したから?



真っ暗な部屋。
扉が閉まる、灯ったスマートフォンの通知。




【ごめん、今日は帰らない】


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